デルメッド ものづくり宣言

三省製薬株式会社 陣内宏行

今までの厳しい品質基準に加え、エコ、エシカル、サステナブル、ダイバーシティといった考えを取り入れた、新時代のものづくりへと進化させていきます。

三省製薬株式会社
代表取締役社長 陣内宏行

- 2021年3月に策定した「デルメッド ものづくり宣言」の具体的な内容について教えてください。

これまでも『安心・安全・満足』にこだわったものづくりを進めてきましたが、これらに加え、未来を見据えた新たなお約束として『原料・処方開発』と『容器開発』という2大テーマに、エコ・エシカル・サステナブル・ダイバーシティの考えを取り入れていきます。

具体的には、『原料・処方開発』では、“トレーサビリティ確保”、“環境負荷低減”、“児童就労・労働搾取なし”、“石油由来原料の削減”に取り組みます。『容器開発』では、“容器リサイクル化の推進”と“環境負荷低減”に取り組みます。

例えば“児童就労・労働搾取なし”では、現在使用しているすべての原料について、ディーラーやメーカーさんに個別にヒアリングを実施し、児童就労や労働搾取が行われていない素材のみを“エシカル素材”として採用していきます。1つひとつ、地道な取り組みを大切にしていきます。

原料・処方開発の取り組み

  • トレーサビリティ確保

    美容成分の原料となる素材について“出どころがわかる”国産素材への切り替えや、提携農園での栽培を推進します。

  • 児童就労・労働搾取なし

    児童就労や労働搾取が行われていない“エシカル素材”の使用を徹底し、社会問題解決に貢献します。

  • 環境負荷低減

    マイクロプラスチックや紫外線吸収剤など、環境負荷が大きいとされる成分の使用を厳しく制限します。

  • 石油由来原料の削減

    サステナビリティに配慮し、安全性、有効性、使用性を損なわず、より積極的な植物由来原料の使用を推進していきます。

容器開発の取り組み

  • 容器リサイクル化の推進

    外装箱や容器の見直しを行い、バイオ樹脂、ガラスなどのリサイクル可能素材への切り替えを推進します。また、レフィル容器の採用も検討していきます。

  • 環境負荷低減

    外装箱や会報誌などの冊子、各種ご案内などに森林保全の制度(FSC)の認証紙を活用するなど、エコ活動を推進します。

- このタイミングで「デルメッド ものづくり宣言」を策定したのはなぜですか。

当社は明治20年創業の『陣内三省堂薬局』という漢方薬局が発祥で、1960年に『三省製薬株式会社』として創業しました。美白有効成分第1号の認証を取得したコウジ酸を筆頭に、美容成分の開発にこだわりつづけ、2019年末に『よりよい成分 よりよい化粧品4.0』という新コンセプトを掲げました。

このコンセプトを当社のオリジナルブランド『デルメッド』に落とし込んだ時、どのようなものづくりができるのか。『よりよい』という部分に、エコ・エシカル・サステナブル・ダイバーシティという要素を取り入れた場合に何ができるのか。新コンセプトを作った時から温めていた方針を実行に移すため、当社の素材開発部と製品開発部のメンバーを中心に2つのチームを編成し、1年かけてじっくりと調査・検討を進めてきました。

例えば、紙製の容器は“エコ”に良いのですが、醤油や酒など食料品の容器には使えても、化粧品には使えないものもあります。一つひとつ確認するために見極め試験を重ねて、本当に実現可能なのかを検証し、取り組み内容を固めていきました。そして2021年に『デルメッド ものづくり宣言』として皆さまに表明するに至りました。

- 「デルメッド ものづくり宣言」に込めた社長の思いは。

今回のものづくり宣言に至る以前から、当社は国際規格ISO9001基準に加えて、『安心・安全・満足』にこだわった取り組みを進めてきました。

実はこれらはレベルが高く、難しいことなんです。例えば“石油由来原料”と“植物由来原料”では、なんとなく“植物由来”の方が肌にいいイメージがあるかもしれません。けれど、漆のように、肌につけるとかぶれてしまう植物も世の中にはたくさんあります。単純に肌のことだけを考えれば、石油系の方が安全という場合もあるんです。でも今の時代、サステナビリティを考えると、“植物性”を取り入れていく必要があります。“植物性”かつ“安全”な美容成分を開発・採用していかなければなりません。そのバランスをきちんととるのは簡単なことではありませんが、これまで試行錯誤しながら取り組み、推進してきました。

これらの取り組みをベースとして、その上に今回、『デルメッド ものづくり宣言』として新たなお約束をすることになります。美容成分の開発力・化粧品としての製剤力・配合力にこだわりつづけてきた会社として、まじめに実直に、しっかりとやっていきたいと思っています。

化粧品は、医薬品ではありませんが、効果が期待されるものだと思います。大前提として『安心』や『安全』なものであることは当然です。そこの前提は崩さずに、より効果があるものを作っていきたい。さらに、エコ・エシカル・サステナブル・ダイバーシティという時代の要請にあわせた価値も実現していきたいと考えています。

- ものづくりのハード面とソフト面としては、どのような取り組みを進めますか。

当社は昨年、創業60周年を迎えたのですが、60周年事業の中核として、2021年7月末に佐賀工場の敷地内に美容成分の新工場を竣工します。人材については、従来、化粧品と医薬部外品に配置していたプロダクトマネージャーを美容成分についても配置します。生産管理機能や品質保証の人員体制も強化して、生産部門全体をブラッシュアップしていきます。佐賀工場はすでに取得済みですが、新工場でも、化粧品に関する国際的なオーガニック認証『COSMOS(コスモス)認証』を取得する予定です。

- 最後に、大切な未来に向けて。

ウミガメの鼻にストローが刺さっていたり、イルカやクジラのお腹からプラスチック製のレジ袋が出てくるような写真は、地球上の環境問題を強く印象づけます。身近なところでも、私を含め当社従業員が清掃活動にボランティア参加している御笠川にはペットボトルやレジ袋がたくさん漂着して、このままではダメだと強く感じます。また、環境だけではなく『エシカル』についても、児童就労や労働搾取がないことが当たり前の世界が実現してほしいと考えます。

こういった課題について、当社が少しでもお役に立てたらと思っています。きれいな環境の未来を次世代に引き継いでいくためにも。

大手企業に比べれば、当社の営みは小さなものかもしれません。でも、小さいなりにやれることはあると思いますし、小さいからこそ尖った取り組みができるということもあります。現状に満足することなく、常に次の一手を考えていきたいと思っています。

三省製薬株式会社 代表取締役社長

陣内宏行