九州工業大学と三省製薬の産学連携プロジェクト 本格スタート
2020年04月06日
竹を原材料に「化粧品の美容成分」と「電気自動車の蓄電デバイスの電極材料」の製造・事業化を目指す
九州工業大学と三省製薬の産学連携プロジェクト
2020年4月15日より本格スタート
国立大学法人 九州工業大学(本部:福岡県北九州市 学長:尾家祐二、以下「九工大」)と、三省製薬では、2020年4月15日より、竹から段階的に「化粧品の美容成分」と「電気自動車用の蓄電デバイスの電極材料」を製造・事業化することを目指す産学連携の共同研究プロジェクトを本格スタートいたします。
当プロジェクトにおいて、三省製薬は「化粧品の美容成分」の研究開発を、九工大は「電気自動車の蓄電デバイスの電極材料」の研究開発をそれぞれ担います。九工大は、約10年にわたり蓄電デバイスの一種である「電気二重層キャパシタ」の電極材料開発に取り組んできた大学院工学研究院・坪田敏樹准教授の研究室が推進します。
昨年12月には、一般財団法人ふくおかフィナンシャルグループ企業育成財団(通称キューテック)より5ヶ年計画での助成金を受けており、2023年4月の事業化を目指しています。
また、現在、特に九州地方では放置された竹林が周囲の環境に害を与える放置竹林問題が顕在化しています。当プロジェクトにより、竹を高付加価値製品として100%有効活用することで竹害の解決にもつながるものと期待しています。
既に三省製薬は昨年、福岡県と九州大学との産官学連携プロジェクトにより、福岡県八女産の竹の”表皮”から美白美容成分を抽出し化粧品を製品化することに成功、「yameKAGUYA」シリーズとして販売を開始しています。
このたびのプロジェクトは、竹の表皮を削り取った後の”竹の幹”部分を原材料として、
1) オリゴ糖を抽出し、美容成分として化粧品に活用する
2) 1)の残りかす(残渣)から活性炭を作り、電気自動車の蓄電デバイスの電極材料にする(電気二重層キャパシタ電極材料)
という流れで、竹の高付加価値活用を目指します。竹から”段階的”に、”複数”の”高付加価値製品”を製造する技術という点で、従来にはない画期的なバイオマスの利用プロセスです。また、水のみを利用した安全性が高く環境負荷の小さい技術であることも特徴です。
九工大・坪田研究室では従来より、電気二重層キャパシタ電極材料の開発に取り組んできました。電気二重層キャパシタは、蓄電デバイスの一種で、コピー機や自動車のパワーウインドウ、ハイブリッドカーなど私たちの生活を取り巻くさまざまなところで幅広く利用されています。同じ蓄電デバイスであるリチウムイオン電池に代表される二次電池と比べ、長寿命で急速な放充電ができるなどの利点がある一方、蓄えられる電気エネルギーが小さいという短所があります。この短所をいかに克服するかが重要な課題となっています。電気二重層キャパシタの電極材料は活性炭のような表面積の広い炭素材料が用いられており、物性(表面積、細孔径、導電性等)の最適化による課題解決を目指しています。
当プロジェクトにおける技術の概要と特長
バイオマスやエネルギーを使用した後の資源や廃棄物を別の用途に段階的に使う「カスケード利用」といわれるものは、高レベルの利用から低レベルの利用へと活用するのが一般的です。例えば、サトウキビから黒糖を抽出し、その後燃料や肥料・飼料にする等があります。一方、今回の取り組みは、バイオマスから分野の異なる高付加価値製品を段階的に製造するという点で、高付加価値創造型の「カスケード利用」として、循環型社会への一助になるものと考えています。
<概 要>
● 竹などのバイオマスを出発原料として、キシロオリゴ糖と電気二重層キャパシタ電極用炭素材料という2つの高付加価値製品を製造する
● 竹の中のセルロースを水熱処理によって高効率で高付加価値オリゴ糖に変換するとともに、水熱処理後の残渣から高性能な電気二重層キャパシタ電極用炭素材料を製造する。
<特 長>
● キシロオリゴ糖と電気二重層キャパシタ電極用炭素材料という高付加価値製品を段階的に製造する技術。
● 加圧熱水処理は、水のみを使用しており、安全性が高く環境負荷も小さい技術。
三省製薬の「yameKAGUYA」シリーズの取り組みを知った九工大・坪田准教授は、竹の表皮以外の部材(竹幹)を自身の研究の原料に利用できると考えました。一方、三省製薬は国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)が主催する「新技術説明会(https://shingi.jst.go.jp/)」で坪田准教授の研究(複数の高付加価値製品を産むバイオマス利用製造プロセス)を知りました。この偶然の出会いにより、両者による産学連携プロジェクトに取り組むこととなりました。既に、危険な試薬を用いずに、竹から比表面積の広い活性炭を作製することに成功しており、手ごたえを感じています。
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九工大と三省製薬の役割分担としては、竹の表皮を削り取った後の竹幹を材料に、まず九工大が200℃の加圧熱水処理を行い、竹の中のヘミセルロース(※1)をオリゴ糖に変換した水溶液を作製します(下図①)。三省製薬はその水溶液からオリゴ糖の一種であるキシロオリゴ糖を抽出し、美容成分への応用と製品化(化粧品)に向けた研究開発を担います(下図②)。九工大は加圧熱水処理を実施した後、セルロース(※2)およびリグニン(※3)を主成分とする残りかす(固体残渣)から活性炭を作り出し、高性能電気二重層キャパシタ電極用炭素材料の製造に取り組みます(下図③)。
当プロジェクトにおける技術の概要と特長
バイオマスやエネルギーを使用した後の資源や廃棄物を別の用途に段階的に使う「カスケード利用」といわれるものは、高レベルの利用から低レベルの利用へと活用するのが一般的です。例えば、サトウキビから黒糖を抽出し、その後燃料や肥料・飼料にする等があります。一方、今回の取り組みは、バイオマスから分野の異なる高付加価値製品を段階的に製造するという点で、高付加価値創造型の「カスケード利用」として、循環型社会への一助になるものと考えています。
<概 要>
● 竹などのバイオマスを出発原料として、キシロオリゴ糖と電気二重層キャパシタ電極用炭素材料という2つの高付加価値製品を製造する。
● 竹の中のセルロースを水熱処理によって高効率で高付加価値オリゴ糖に変換するとともに、水熱処理後の残渣から高性能な電気二重層キャパシタ電極用炭素材料を製造する。
<特 長>
● キシロオリゴ糖と電気二重層キャパシタ電極用炭素材料という高付加価値製品を段階的に製造する技術。
● 加圧熱水処理は、水のみを使用しており、安全性が高く環境負荷も小さい技術。
【 九州工業大学 坪田敏樹准教授プロフィール 】
所属 工学研究院 物質工学研究系
1972年 生まれ
1994年 九州大学工学部応用化学科卒業
2000年 博士(工学)九州大学
● 研究テーマ : 「バイオマスから高機能な炭素材料を創製する」
・電気二重層キャパシタ電極用炭素材料の開発
・植物の組織構造を活用した細孔制御された多孔質炭素材料の創製
・竹のカスケード利用による複数の高付加価値製品の製造
● 分野 : 炭素材料
● 知的財産権(技術シーズ)
・電気二重層キャパシタの製造方法 特許5846575
・電気二重層キャパシタ分極性電極用炭素材料の製造方法 特許5652636
・ICソケット用接触子及びその製造方法 特許4797180
・紐状炭素及びその利用方法並びにその製造方法 特許5193432
● 研究室ホームページ
http://www.ccr.kyutech.ac.jp/professors/tobata/t4/t4-2/entry-734.html
三省製薬にとっての取り組みの意義
三省製薬は昨年、福岡県八女市で無農薬栽培された竹の”表皮”を手作業で削り取ったものから独自技術で抽出した美容成分「竹幹表皮エキス」を配合した美白化粧品「yameKAGUYA」シリーズを販売し、大変好評をいただいています。
今後は、三省製薬が長年にわたり培ってきた成分開発力を最大限に発揮し、「キシロオリゴ糖」由来の美容成分の開発と、化粧品への展開に取り組んでいきます。キシロオリゴ糖由来の美容成分を「yameKAGUYA」シリーズに最適な処方で配合することで、根と葉以外の竹を100%有効活用した日本初の美白化粧品を目指します。
三省製薬は2020年より、「よりよい成分、よりよい化粧品4.0」を新たなコンセプトとして掲げ、「エシカル、エコ、サステナビリティ」に配慮したものづくりに取り組んでいます。今回の取り組みは、竹由来のよりよい成分を開発し、その成分を活用したよりよい化粧品づくりへの挑戦です。また、竹を通じた環境保全活動を通して「エシカル、エコ、サステナビリティ」を意識したものづくりを具現化していきます。
国立大学法人 九州工業大学 概要
■法人名:国立大学九州工業大学(Kyushu Institute of Technology, Kyutech)
■設立:1909年4月
■学長:尾家 祐二
■キャンパス:
(戸畑キャンパス)本部、工学部/大学院工学府
〒804-8550 福岡県北九州市戸畑区仙水町1番1号
(飯塚キャンパス)情報工学部/大学院情報工学府
〒820-8502 福岡県飯塚市川津680番4
(若松キャンパス)大学院生命体工学研究科
〒808-0196 福岡県北九州市若松区ひびきの2番4号
■学生数:5,646人(学部4,121人、大学院1,525人)
■職員数:674人(有期雇用、パートタイム職員のぞく)
三省製薬株式会社 会社概要
■社 名 :三省製薬株式会社(Sansho Pharmaceutical Co.,Ltd.)
■創 業 :1960年3月
■代表取締役社長 : 陣内 宏行
■資本金:8,767万円
■売上高 :28億5,590万円 (2019年3月期現在)
■事業所:
本社
〒816-8550 福岡県大野城市大池2丁目26番7号
佐賀工場
〒841-0048 佐賀県鳥栖市藤木町5番1
■事業内容:
化粧品原料の開発、製造、販売
医薬部外品・化粧品の開発、製造、販売(通信販売・OEM)
■社員数 :140人(パート社員含む)